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　軽自動車・コンパクトカーでは［ー］［す］［っ］［と］［く］［い］［ら］、中級車・高級車では［ー］［ん］［す］［ら］［あ］［り］［る］。これらの拍がネーミングに多用されていました。［ー］［す］［ら］が両ネーミングに共通な拍。その他は異なっています。
　上位の拍を使って出来上がるネーミングとして、軽自動車・コンパクトカーでは「トックス」「ストック」「イースト」「ストライク」「クイット」などが、中級車・高級車では「アースラン」「ルリアン」「ラリアンス」「リアル」などが考えられます。これらは、小型車っぽい、あるいは高級車っぽいネーミングだと言えるのではないでしょうか。
　ネーミングの作成者はどのように音を感じて車の名前を決めているのでしょう。
　【軽自動車・コンパクトカー、中級車・高級車に共通な拍】

［す］	『心地よい』『滑らかな』『淡泊な』『容易な』『少ない』『速い』『鋭い』『安心な』『古びた』『軽い』『余裕のある』『広い』『汚れた』『新しい』
［ら］	『不安定な』『明るい』『粗い』『新しい』『滑らかな』『穏やかな』『回転する』

自動車の滑らかな動きを表現する音として用いられているようです。

　【軽自動車・コンパクトカーに特有の拍】

［っ］	『速い』『短い』『安定した』『明確な』『狭い』『強い』『鋭い』『回転する』『丸い』
［と］	『優れた』『落ち着いた』『太い』『濃い』
［く］	『抵抗感のある』『満足な』『不満な』『丸い』『回転する』
［い］	『愛情のある』『容易な』『継続する』『活発な』

全体にシャープな音が選ばれているようですが、落ち着きを表現するための［と］も使われています。

　【中級車・高級車に特有の拍】

［ん］	『活発な』『強い』『重い』『固い』『静かな』『穏やかな』『回転する』『丸い』
［あ］	『新しい』『高揚した』『安心な』『賑やかな』『粗い』『淡泊な』『明るい』『穏やかな』
［り］	『明確な』『安定した』『鋭い』『鈍い』『遅い』『丸い』『回転する』
［る］	『滑らかな』『変化する』『古びた』『余裕のある』『遅い』『長い』『太い』『軽い』『不快な』『丸い』『回転する』

ヘビー系、ゆったり系の音が目立ちますが、新しさや明るさの表現に［あ］も用いられています。

　全体として、小さな車にはシャープ系、大きな車にはヘビー系の拍が取り入れられていることから、ネーミング作成者の意図（感性）をうかがい知ることができます。
　また、車のネーミングでは、大型小型に関わらず長音［ー］が最も多く用いられている点が特徴的です。
　長音は、文字通り長くのばす音で、長音の直前の拍の母音を長くのばして発音します。［かー］［きー］［くー］［けー］［こー］は［かあ］［きい］［くう］［けえ］［こお］となって長音部分は異なった発音になるのですが、［かー］［さー］［たー］の場合の長音は同じ［あ］の音であり、［きー］［しー］［ちー］の長音はどれも［い］の音になります。
　［かあ］を拍に分けると［か］［あ］となり、音素記号で表すと［ｋａ］［ａ］。しかし、私たちは［ｋａ］と［ａ］を区切って発音するのではなく、二つの拍を連続して発声します。そのときに［ｋａ］と［ａ］をつなぐのが渡り音［ａａ］です。
　つまり、［かー（かあ）］の発声の流れは、［ｋａ］+［ａａ］+［ａ］で表すことができます。また、［あか］では［ａ］+［ａk］+［kａ］のように［ａ］と［kａ］の間に渡り音［ａk］が存在します。［かあ］と［あか］、拍を入れ替えたときに言葉の響きのイメージが違って感じられるのは、渡り音［ａａ］と［ａk］の違いによることが大きいと考えられます。
　もちろん、拍と同様に渡り音も、音の響きのイメージをもっています。３４００語の集計結果から、長音にともなう渡り音のイメージは次のものであることが分かっています。

［ａａ］	『大きい』『多い』『高揚した』『賑やかな』『広い』『新しい』
［ｉｉ］	『小さい』『鋭い』『固い』『賑やかな』『抵抗感のある』『細かい』
［ｕｕ］	『安定した』『余裕のある』『重い』『滑らかな』『満足な』『長い』
［ｅｅ］	『落ち着いた』『安定した』『きれいな』『上品な』『安心な』
［ｏｏ］	『大きい』『安心な』『粗い』『広い』『優れた』

　これら、五種類の渡り音の違いによって、長音の響きのイメージも異なることとなります。軽自動車・コンパクトカーのネーミングにおいて、長音［ー］による渡り音のうち最も多かったのが［ｉｉ］、中級車・高級車では［ａａ］が多用されていました。ここでも車の大きさを意識した音使いによってネーミングが行われていることが分かります。

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