【ネーミングから見える日本人の感性】
(20)エステサロンは上品にスマートに
正しくはエステティックサロンと言いますが、エステサロンあるいはエステという言う呼び名が一般的になっています。フェイシャルケア、ボディケア、ワックス脱毛、痩身。年齢を越えて美への関心は高まっていて、今やエステサロンが何かを知らない人はいないほどメジャーな業種の一つとなっています。最近では、女性だけでなく男性への需要も増えていて、男性専用のお店も開業されるほどです。
エステサロンのお店の名前に多く使われている拍を集計してみました。[ー][ん][る][り][え][す][あ][ら][し][さ]。大きな特徴は、[え]が多く用いられている点、サ行音が多い点です。
[え] | 『落ち着いた』『きれいな』『難しい』『安定した』『穏やかな』『上品な』『嬉しい』『鋭い』 |
[す] | 『心地よい』『滑らかな』『淡泊な』『容易な』『少ない』『速い』『鋭い』『安心な』『古びた』『軽い』『余裕のある』『広い』『汚れた』『新しい』 |
[し] | 『物静かな』『上品な』『愛情のある』『新しい』『悲しい』『不快な』『意地悪な』『落ち着いた』『地味な』 |
[さ] | 『乾いた』『淡泊な』『劣った』『地味な』『悲しい』 |
エステサロンの店名には、上品でスマートな印象の音が好まれて使われていることが分かります。濃い、粗野、暗い、太いといったイメージを避けた、爽やか系・あっさり系のネーミングが行われているようです。
サ行音の中で[せ][そ]があまり使われないのは、[せ][そ]から伝わる「せかせか」「せこせこ」「せわしい」「こそこそ」「そわそわ」「そそくさ」などに代表される落ち着かない音の響きがエステサロンにそぐわないことを経営者(ネーミング考案者)が感じ取っているからだと考えられます。
[せ] | 『押し迫る』『落ち着かない』『狭い』『細かい』『意地悪な』『悲しい』『物静かな』『継続する』 |
[そ] | 『地味な』『細い』『落ち着かない』『暗い』『物静かな』『緩慢な』『遅い』『弱い』『上品な』『不安な』『鈍い』『粗い』 |
行別の占有数を調べると、最も多いのがラ行音、次いでア行音(母音)、サ行音、タ行音、カ行音の順で、通常のネーミングでは使用頻度が比較的高くなるカ行音が珍しく少ない構成になっていました。きちっとした感じよりも、さっぱり、あっさりとした洗練された雰囲気を優先したネーミングが行われているようです。
また、長音[ー]の使われかたでは、[えー][れー][せー][てー][めー]といった渡り音[ee]を作りだす長音が多めに用いられていました。
[ee] | 『落ち着いた』『安定した』『きれいな』『上品な』『安心な』 |
エステサロンの音の構成とよく似ているのが、シャンプーの名前です。エステサロンではラ行音、ア行音、サ行音、タ行音、カ行音の順でサ行音が多いのが特徴でしたが、シャンプーではラ行音、サ行音、ア行音、タ行音、カ行音の順となり、さらにサ行音が多くなっていて、さらさら感、すっきり感がより強調されたネーミングになっています。
★言葉の語感に興味をおもちの方へ
「Sapphire(サファイア)」は無償の語感分析ツールです。(語感分析士育成会が無償提供中)
「コラム・ISOP物語2」 http://isop.bunsekishi.com/column2.htm