【ネーミングから見える日本人の感性】 
 (21)スナック菓子は半濁音で食べる

 子どものおやつとして、酒のつまみとして、食事がわりの軽食として、どこの家庭にもお気に入りのスナック菓子のいくつかが常備されているのではないでしょうか。スナック菓子を定義することは難しいのですが、ここでは「ポテルカ」「プリングルズ」「カラムーチョ」などのポテトチップス系、「キャラメルコーン」「カール」「うまい棒」などに代表されるサクサクとした食感のパフ系、コーン・ジャガイモ・米・小麦粉を素材とした「とんがりコーン」「ハッピーターン」「かっぱえびせん」などの焼き菓子・揚げ菓子系をスナック菓子として扱うことにいたします。
 これらの商品はコンビニやスーパーの棚に無数に並んでいるような気がするのですが、リストアップできたのは56種類と意外に少なく、ややデータ不足気味での調査となりますことをご了承ください。

 スナック菓子のネーミングでは、[っ][ー][ん][ぽ][こ][り][た][と][ぷ][か]の順に拍が用いられ、行別ではタ行・パ行・カ行・ラ行・サ行の順となり、これまで調査を行ってきたカテゴリーでは見られなかったパ行音(半濁音)が初めて登場します。
 スナック菓子の名前の大きな特徴となっているパ行の拍に着目しましょう。最も多く使われていたパ行音は[ぽ]、次いで[ぷ][ぱ][ぴ]の順。[ぺ]の音はほとんど見られませんでした。
[ぽ]『乾いた』『軽い』『小さい』『少ない』『丸い』
[ぷ]『短い』『活発な』『軽い』『太い』『大きい』『速い』『明確な』『多い』『難しい』『押し迫る』『安定した』『余裕のある』『丸い』
[ぱ]『活発な』『速い』『軽い』『大きい』『乾いた』『押し迫る』『心地よい』『高揚した』『明確な』『鋭い』『丸い』
[ぴ]『明確な』『小さい』『活発な』『明るい』『鋭い』『湿潤な』『新しい』『狭い』『強い』『賑やかな』『高揚した』『短い』『派手な』『粗野な』
[ぺ]『弱い』『滑らかな』『賑やかな』『軽い』『広い』『粗野な』『汚れた』
 半濁音のほとんどが、ボールがぽんぽんと弾むような軽やかで活発なイメージを伝えます。アンパンマン、ポケモン(ピカチュー)…、幼児が半濁音を好むと言われるのも、パ行音には暗さや不安感がなく、可愛らしさや親近感を生み出す音であり、統計的な理由を示されなくても、半濁音が作り出す雰囲気を私たちが自然に感じ取っているからです。
 ただし、表の通り[ぺ]だけは弱くて品のない響き(うすっぺら、のっぺり、ぺかぺか、ぺらぺら、ぺちゃぺちゃ、ぺっ)を感じさせます。スナック菓子に限らず食品の名前に[ぺ]の音があまり使われない理由がお分かりいただけるでしょう

 調査を行ったスナック菓子56品目のうち半濁音を含む商品名は27品目。これは過半数に迫る数字です。一般の和語、3400語の集計では半濁音を含む言葉は全体の約8%という結果を得ています。スナック菓子のネーミングでは驚異的な比率で半濁音が使われていると言えるでしょう。
 パリパリ、ポリポリとした軽い食感を表現するにはパ行音が最適であり、スナック菓子のネーミングには半濁音が積極的に取り入れられているというわけです。

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