【言葉の音とネーミング】 
 (27)言葉の音を見る

 「がちがち」「かちかち」は固い。「むちむち」「ねちねち」は柔らかい。「ぴちぴち」や「ぷちぷち」は意味的には固さや柔らかさとあまり関係のない言葉ですが、「がちがち」「かちかち」ほどには固くないけれども、「むちむち」「ねちねち」よりは固い感じがします。
 語感とは言葉の音の響きのイメージのことであり、語感分析とは言葉の音の響きのイメージを可視化(数値化)することを意味します。

 言葉を構成する拍の一つひとつがもつイメージを参照することで言葉全体のイメージの傾向を知ることはできますが、その言葉がどの程度『明るい』のか、どの程度『重い』のかは分かりません。語感の強さの程度を知るためには、その言葉の語感を数値化して一般的な言葉(平均の値)と比較する必要があります。
 その拍がどのような意味の言葉にどの程度用いられているのか、意味毎の出現頻度を統計的に求めれば、「この音は、『柔らかい』や『曖昧な』などの表現に向いているが、『速い』や『小さい』の表現には向かない」といった、拍がもつ傾向を知ることができるだけでなく、拍と意味の関係を数量的に示すことが可能となります。そして、分析の対象となる言葉全体から伝わる語感を、言葉を構成する拍一つひとつがもつ様々な種類と大きさの「イメージのベクトル」の集合体として数値化することが可能となります。
 こうして得られた分析の対象となる言葉全体のベクトル(「固有イメージ」と呼びます)の一つひとつと、平均的な日本語がもつベクトル(「平均的イメージ」)とを比較することで、様々な語感種について語感の強さを表すことができます。
 つまり、「語感の強さ」=「固有イメージ」/「平均的イメージ」で表すことができ、語感種のそれぞれについて、平均的な日本語と比べて語感の強さが何倍であるかを数値として示すことが可能となります。
 さて、言葉の音には、拍以外に「渡り音」があります。渡り音は、拍と拍をつなぐ音のことで、「薬(くすり)」という言葉であれば、「く」と「す」をつなぐ[ us ]、「す」と「り」をつなぐ[ ur ]が渡り音です。「くすり」の拍の順番を入れ替えると「リスク」という言葉が出来上がり、[ is ][ uk ]が渡り音となります。言葉の意味を抜きにして、「くすり」と「リスク」とでは音の印象が変わります。この語感の変化は渡り音の違いによって発生していると考えられます。渡り音は、仮名で表すことも単独で発音することもできないため、普段の生活の中で意識されることはありませんが、拍と同じように言葉の語感に影響を与える音なのです。
 語感分析では拍と同様に渡り音も分析の対象に含め、渡り音についても「語感の強さ」=「固有イメージ」/「平均的イメージ」の式が適用されます。例えば、「くすり」という言葉は3つの拍と2つの渡り音([ku]+[us]+[su]+[ur]+[ri])のイメージのベクトルが積み上げられ、一般の日本語との比較によって語感の強さが算出されることになります。
 語感の計算方法はとてもシンプルなのですが、計算に必要なデータが非常に多い(130種の拍と175種の渡り音を対象として、68の語感種について分析を行うには2万を超えるデータが必要となる)ため、語感の分析を正確にそして迅速に行うためにはコンピューターの力が不可欠となります。

 「語感分析士育成会」では、WEB版語感分析ツール「Sapphire(サファイア)」の使用を無償で提供しています。
 語感の分析にご興味をおもちの方はお試しください。
【Sapphireによる分析例】
きゃりーぱみゅぱみゅ
もふもふ



「コラム・ISOP物語2」 http://isop.bunsekishi.com/column2.htm

Copyright © 2014 ISOP Inc. All rights reserved.