【右脳を刺激する言葉】 
 (4)ポジティブな音とネガティブな音

 集計結果からいくつかご紹介しましょう。以下は『明るい』『軽い』『暗い』『重い』の各グループについて、出現頻度の高い音をリストアップしたものです。出現頻度が高いとは、グループ内でのその音の出現数が多いということではなく、3400の和語データ全体での出現率に比べてそのグループでの出現率が高いことを意味します。
『明るい』[ぴ][は][か][ぴゃ][き][ら][け][あ][れ]
『軽い』[ぴょ][ひょ][きょ][ぱ][ぷ][ぽ][ぺ][みょ][ちょ][こ][ふ][す][ちゃ][る]
『暗い』[じ][しょ][ぼ][そ][げ][め][ぞ][ぐ][う]
『重い』[ぎゅ][じゅ][ど][ご][ぼ][じょ][で][ぐ][ず][ん]

 予想通り、『明るい』『軽い』音には半濁音の[ぱぴぷぺぽ]が、『暗い』『重い』には濁音が多く見られます。
 しかし同じパ行の音でも、[ぴ]は『明るい』グループに、それ以外の[ぱ・ぷ・ぺ・ぽ]は『軽い』グループに属しています。一般に明るい音だと言われているパ行ですが(もちろん、どの音にも暗いイメージはありませんが)、際立って明るいのは[ぴ]のみで、パ行の傾向としては、「軽い音」とするのが正しいと言えるでしょう。
 [ど・ご・で・ず]は『重い』けれども、『暗い』イメージに多用されるような音ではありません。さらに、[が・ざ・ぜ・だ]などは『暗い』にも『重い』にも含まれていません。暗く重い音とされる濁音ですが、一つひとつがそれぞれに個性をもっていて、ひとまとめにしてイメージを決めつけることはできないことがこれらのデータから読み取ることができます。
 また、『明るい』と『軽い』の両グループの音を組み合わせて「ちゃらちゃら」「ぽかぽか」「ぴこぴこ」、暗い音と重い音から「ごぼごぼ」「もぞもぞ」「じめじめ」「うじうじ」「ぐでんぐでん」などの言葉を組み立てることができます。

 中には変わった特徴をもつ音も見つかりました。たとえば[り]の音は、明確さや鋭さを表す語に多く見られるという点では[き]の音に似ているのですが、『鋭い』イメージのグループに属すると同時に『鈍い』イメージのグループにも属しています。鋭くて鈍いというのは想像しにくいイメージですが、要するに、鋭い意味にも鈍い意味にも使われる音だということになります。「きり」と「のり」では、「きり」は鋭い感じがするが「のり」は緩慢で鈍い感じがするといった具合に、言葉になったときにどの音と組み合わされるかによってその役割を変えることができるというわけです。
 他にも、[く]は『満足な』と『不満な』に属し、[れ]は『優れた』と『劣った』に属しています。[け]や[し]は『愛情のある』グループとともに『意地悪な』グループにも属していました。これらはどちらのイメージに使われても違和感のない音であり、人の性格に例えるならツンデレみたいな二重人格の音。どちらもこなせる器用な音なのです。

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