【集計・分析結果1 姓名判断を信じる人、信じない人】 
 (16)姓名判断を信じる人ってどれくらいいるの?

 あるアンケート調査の結果によれば、名前を決めるときに何を最も重視するかとの問いに、約20%の人が「画数」と答えたそうです。画数と音の響き、画数と漢字の意味といった組み合わせまで含めると、赤ちゃんの命名に姓名判断を取り入れる人は相当数に上るであろうことが予想されます。一体どれくらいの人が姓名判断によって命名を行っているのでしょうか? ここでは、姓名判断が用いられた名前の割合を、画数を集計した結果から割り出します。

 グラフ3-1は、一般姓名4万人分の人格の平均と頭格の平均の画数別出現率グラフを重ねて表示したものです。頭格のグラフがなだらかで整った山型を示しているのに対して、人格ではグラフが激しく上下しています。

 人格は、姓の末尾と名の先頭の文字の画数を足したもの(山田太郎→田+太)で、姓名判断において五格の中でも特に重要な格とされ、一方の頭格は、姓の先頭と名の先頭の文字の画数を合計したもの(山田太郎→山+太)で、従来の姓名判断では用いられない格です。ともに、名の先頭の1文字を含むという点、必ず2文字の画数の合計であるという点で共通しており、条件の似ているこれら2つの格の画数別出現率グラフは似たような形になることが予想されるわけですが、結果はご覧のように似しているとは言い難い折れ線を描きます。

 頭格のグラフが、確率論などで言われる正規分布曲線に近い滑らかな曲線を描くのは、既存の姓名判断の影響をほとんど受けていないためです。また、人格のグラフが、頭格のグラフに沿いつつも上下を繰り返してギザギザな形になるのは、姓名判断による良し悪しによって作為的に画数が作られているからです。もし、姓名判断に人格という要素が存在せず、単なる、姓の末尾と名の先頭の文字の画数を合計した値であったなら、人格のグラフと頭格のグラフは、ほぼ重なり合ったことでしょう。

グラフ3-1
人格と頭格

 人格で突出している11画・13画・15画・21画・23画などは、姓名判断で「吉数」とされる画数。逆に、出現率が異常に低くなっている9画・10画・12画・14画・19画・20画・22画は「凶数」とされる画数で、人格のグラフの不自然な上下は、姓名判断で用いられる吉凶表にほぼ完全に符合した形で現われていることが分かります。このような数値の偏りは、人格だけでなく、地格、外格、総格でも同様に見られ(天格は予め苗字として決まっているので手を加えることができない)、多くの人たちが姓名判断を信じ、画数による吉凶にこだわって命名をしていることがうかがえます。

 本題に戻りましょう。姓名判断を実践している人たちの比率がどの程度なのかは、頭格と人格のグラフ(出現率)の違いを利用することで推定できます。
 グラフ「人格と頭格の出現率比較」の12画に着目してみましょう。12画は吉凶表での「凶数」であり、姓名判断では「悪い」とされる画数ですので、出現率は4.5%と、その前後の画数と比べて大きく落ち込んでいます。一方、吉凶表の影響を受けない(意図的に画数がいじられていない自然な状態である)頭格での12画は5.7%の出現率となっていて、その差は1.2%になります。話を分かりやすくするため、全体のデーター数を1000人だと考えれば、元々は人格が12画の人が57人いたが、そのうちの12人が姓名判断の結果、「12画はよくないから」という理由で他の画数に変更したと考えられ、姓名判断の吉凶表に従って12画を避けた人の割合は、12÷57×100=21% であったということになります。同様にして、出現率が落ち込んでいる、凶数とされる画数について調べた結果が表3-4です。

姓名判断

 以上の結果から、全体の約2割から3割(推定値の平均は約24%)の名前が姓名判断を参考にして命名されたと推定されます。
 さらに、同様の方法で、「昭和生れ男性」・「昭和生れ女性」・「平成生れ男性」・「平成生れ女性」の別に、姓名判断によって命名されたと思われる人の比率を計算した結果、次の数値を得ました。

姓名判断によって命名
 女性より男性のほうに姓名判断が用いられる機会が多く、時代別では昭和生れより平成生れのほうが圧倒的に高い比率で用いられています。なんと、平成男子ではその4割近い名前に姓名判断が用いられていると考えられるのです。
 シビアな見方をすれば、この数字には子の命名にかける親の意気込み、思い入れの強さが表れているとも言え、昭和生れ女性名のその比率の低さには男尊女卑の傾向が強かった古い時代の悪しき慣習が反映されていると考えられます。
 年配の方々よりも、若いお父さんお母さんたちのほうが占いを重視している。いや、重視と言うより、占いに慣れていると言ったほうがよいのかもしれません。姓名判断の誕生から80年余りが経った今、その浸透力は衰えるどころか益々強くなっていることを数字が物語っています。



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