【姓名判断の仕組みと矛盾】 
 (4)吉数と凶数の怪(吉凶表の仕組みは小学生レベルだ)

 家庭で姓名判断を用いる場合には、格と格との関係を観るといった複雑な占い方は一般的ではなく、五格単独の画数がそれぞれよい数字なのか悪い数字なのかで判断するのが通常でしょう。その際、数字の良し悪しの基準となるのが「吉凶表」です。流派ごとに吉凶表が用意されているわけですが、どれもその内容が非常に似ていることから、本々は一つの吉凶表であったと思われます。また、ほとんどの場合、1画から81画までの数字についての吉凶が記されていて、「81画を超えるときは、その数から81を引いた数とする」となっています。今回、10万人余りの名前を集計した結果では、姓名の総画数の最高は72画で、70画を超えたのはこの1人だけでしたから、70まであれば実用に十分耐え得るのではないかと思われるのですが、「旧字体派」による姓名判断では81画を超えることも珍しくないのかもしれません。

 次の表は、6つの流派の1画から40画までの吉凶表を並べたものです。どの流派も申し合わせたように似通っているのがお分かり頂けるでしょう。せいぜい吉と大吉、凶と大凶の違いがある程度です。一つくらい独自の研究から生まれた吉凶表をもつ流派があってもよいと思うのですが、そんなことをしたら邪道扱いをされて、他の流派からも一般の人々からも相手にされないのでしょうね。現在の姓名判断において、占いの要となる吉凶表はそれほどまでにポピュラーで絶対的な存在になっているものなのです。

吉凶表

 一見すると、吉凶の順番は無造作に並んでいるようにも見えますが、81画までの並びを、1から10、11から20、21から30、31から40… のように10画ごとに区切ってみると、あるパターンが見えてきます。すなわち、1は吉、2は凶、3は吉、4は凶、5は吉、6は凶、7と8は吉、9と10は凶という繰り返しで成り立っているという点です。6画、16画、24画、27画など、規則性から外れている画数もあり、全てが同じ並びだとは言えませんが、私の調査では、81の画数のうち69の画数(全体の85%)が規則的に並んでいました。また、規則から外れる場合は、どの流派も同じような外れ方をしています。

 なぜ、10を区切りとして規則的に並ぶのか? これは、中国の五行説から発展した十干(じっかん)という考え方が基になっているからです。十干というのは、世の中のものはすべて、木・火・土・金・水の5つからなるという五行説と、すべてのものは陰と陽の2つに分けられるという陰陽説の組み合わせから生まれる10分類のことです。
 この中国の古い思想を、機械的に数字に当てはめて作成したものが吉凶表であり、吉凶表と名前の画数を照らし合わせて占うのが姓名判断だということになります。

 人の運勢と画数の相関関係をデーター化した結果から吉凶表が作成されたのであれば、吉凶が規則的に並ぶなどということは起こり得ないのではないでしょうか。
 人の運勢と名前の関係を調べた結果を基にして吉凶表が出来上がったのではなく、予め作成しておいた吉凶表に名前の画数を当てはめているに過ぎないという点は、今後、画数と運勢の関係を考察してゆく上で重要な意味を持ちます。



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