【姓名判断の仕組みと矛盾】 
 (6)霊数のジレンマ(これはイカサマじゃないのか?)

 不思議な数です。不思議といっても神秘的だという意味ではありません。霊数とは、姓が1文字、または名が1文字のときに発生するイレギュラーな特別ルールのことで、姓名判断では当たり前のように用いられています。

 外格(=総格-人格)では、姓または名が1文字の場合は1を加え、姓も名も1文字の場合は2を加えることが多く、天格(姓の画数)と地格(名の画数)では、1を加える流派と、何も加えない流派とがあります。人格と総格では霊数1が使われることはありません。また、霊数に年齢制限を与えて、20歳を過ぎた人にだけ用いる場合があるなど、その解釈と扱い方がマチマチなのが現状です。
 1画違えば結果が大違いの姓名判断で、「1字姓・1字名の場合には、それぞれ天の恵み、万物の起源の数である霊数1を加える」などと唐突に言われ、暗黙の了解の如く画数に+1や+2が行われることに不自然さを感じないほうが変ではないでしょうか。

 何も手を加えない(霊数を用いない)場合の「中森 雪」さんは、次のような五格になります。
天格=「中(4画)」+「森(12画)」=16画
人格=「森(12画)」+「雪(11画)」=23画
地格=「雪(11画)」=11画
外格=総格(27画)-人格(23画)=4画
総格=「中(4画)」+「森(12画)」+「雪(11画)」=27画

 一方、霊数を用いるある流派の姓名判断では、「中森 雪」さんは、次のように五格が計算されます。
天格=「中(4画)」+「森(12画)」=16画
人格=「森(12画)」+「雪(12画)」=23画
地格=「雪(11画)」+霊数1=12画
外格=「中(4画)」+霊数1=5画
総格=「中(4画)」+「森(12画)」+「雪(12画)」=27画

 双方の結果を見比べると、天格、人格、総格は同じですが、地格は11画と12画で異なり、外格も4画と5画で異なっています。姓名判断で用いられる一般的な吉凶表で地格を見ると、11画が大吉であるのに対し、12画は凶。外格では4画が大凶で5画は大吉となり、格を単独で観た場合、これらの占いの結果は、まったく正反対のものとなってしまいます。
 吉凶表のところでもお話をしましたが、画数の吉凶はほぼ規則的な配列になっていて、大雑把に見れば奇数の画数は吉、偶数の画数は凶という順番(8と9だけは逆ですが)になっています。つまり、霊数を用いるか用いないかのサジ加減ひとつで、地格や外格の吉凶を逆転させることができるわけです。

 男の子では「陸」「蓮」「翼」「空」「颯」「悠」「翔」など、女の子では「萌」「葵」「杏」「楓」「遥」「心」「凜」「舞」など、最近の人気の名前の上位にも1字名が多く見られます。昭和の時代も「誠」「剛」「亮」「健」「徹」「聡」「淳」や「恵」「瞳」「愛」「彩」などが人気を博していました。1字姓の人はもちろんですが、これらの1字名を付けようとしたとき、多くの人たちが霊数のジレンマに悩まされたはずです。

 画数を数えるだけの作業を、なぜ、これほどまでに分かりにくく複雑にする必要があるのか? この霊数1というのは、先に紹介した五行思想と関係があるのではないかと考えられます。五行思想にはゼロの概念が無く、ゼロという数字は扱えないからではないのかと。五行思想を基に作られたとされる吉凶表では、1から81までの数字については記されていますが、ゼロについては触れられていません。
 総格から人格を引いた値である外格は、1字姓+1字名の名前の場合(総格=人格なので)、外格は0画となってしまうが、吉凶表にはゼロが無い。これでは都合が悪いということで、ゼロを回避するために設けられたのが霊数1なのではないか。そして、その後の流派によって、霊数1が様々な解釈をされるようになったのではないかと考えられます。

 本サイトでは、外格=ゼロの場合はそのままゼロとしてカウントします。霊数は流派によって扱い方が異なる不安定な要素であり、それを取り入れることには無理がありますし、合理的な方法だとも思えないからです。



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