大人のための寓話集」 by含蓄王

 「すっぱい葡萄」(ブドウを見上げるキツネたち)
 どうすれば手が届く?

『解決策がわからないのではない。問題がわかっていないのだ。』(チェスタートン)

『最善の解決策は常に最も単純な解決策である。』(オッカム)



 キツネが、たわわに実ったおいしそうなぶどうを見つけました。背伸びをしてぶどうを取ろうとしますが、どうしても手が届きません。
「あれはまだ熟れていないすっぱいぶどうだ。まずくて食べられないさ。」
キツネは捨てゼリフを吐いて去って行きました。

 二匹目のキツネがやって来ました。ぶどうに向かって何度もジャンプをしますが、届きません。
「うーん、もう少しなのになあ。よし、ジャンプ力を鍛えてから、もう一度挑戦しよう。」
キツネは軽やかな足取りで去って行きました。

 それから一週間が経ちました。

 一匹目のキツネがリンゴをかじりながらやって来ました。キツネはぶどうをちらりと見上げました。
「けっ、相変わらず不味そうなぶどうだ。このリンゴの方が百倍美味いぜ。」

 ぴょんぴょんと跳ねながら二匹目のキツネがやって来ました。
「さーて、練習の成果を試すとするか。」
キツネはぶどうに向かって思い切りジャンプをしました。しかし、ぶどうには届きません。
「くそー、まだ修行が足らんか。」
キツネは悔しそうにぶどうを見上げました。

 そこへ別のキツネが通りかかりました。
「お前らさー、馬鹿じゃねぇの?」
そう言うとキツネは、ぶどうを見上げているキツネをひょいと肩車しました。
「ほれ、さっさと取れ。」





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